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日本アマチュア衛星通信協会
SEEDS衛星のデジトーカを聞いてみよう衛星通信の入門はまず受信から 衛星からの電波を受信するのは意外に簡単、でもけっこう奥が深いのです。 JAMSAT
“こんにちは*****”
日本大学の作成した SEEDS衛星 は、デジトーカと呼ばれる、デジタル録音された音声を435MHz帯のFM変調の信号として繰り返し送信する機能を持っています。この信号は比較的強く、ハンディー無線機と付属のアンテナといった簡単な設備でもなんとか受信できますから、人工衛星から送られてくる電波の受信を初めて試みるのにはうってつけの素材です。SEEDS衛星については日大のWebサイトに説明 があります。 ではさっそく受信してみましょう。 その前に,ちょっとだけSEEDS衛星についておさらいをしておくと;
1.受信機と周波数は この衛星は437.485MHzにてCW (電信,断続信号)かFM変調(音声だけとは限りません)で送信します。 この周波数を受信できれば、ハンディーFM無線機でも広帯域受信機でもかまいません。 一つ注意することは、弱い信号も聞き逃さないように必ずスケルチを開いておく(ザー)ことです。CWの信号をきちんと聞くにはCWモードやSSBモードのある受信機が必要ですが、FM無線機でもブツブツと聞こえます。 2. アンテナは 飛行高度が600kmということは、衛星があなたに一番近づいたとしても600km以上も離れていることを意味します。そこから0.5Wに満たない出力で送信された電波は、受信機に届く時にはとても弱くなっています。その微弱な信号を受信するのですから大きなアンテナが必要になると考えがちですが、実は最良の条件であれば受信機に付属する短いホイップアンテナでもなんとか受信できる強さなのです。 まずは受信機付属のアンテナで挑戦してみましょう。でも、はっきり聞こえることは期待しないでください。 3.デジトーカの運用予定を知ろう SEEDS衛星はいくつかの運用モードを持っており、FM変調はその一つ、デジトーカはそのまた一つです。デジトーカが運用されていない時にいくら受信を試みてもデジトーカが聞こえるはずがないのですが、何かは聞こえるでしょうからとにかく試してみましょう。 コマンド局がいつ運用モードの切り換えを行うのかは知りたい人は、日大の管制BLOGを見てみましょう。 4. いつ衛星が上空を通過するのか知ろう 電波は光と同じように直進するものですから、あなたから見える範囲に衛星がなければどう頑張っても衛星からの電波を受信できません。地域にもよりますが、SEEDS衛星は午前と午後に数回ずつ皆さんから見えるところを通過します。いつSEEDS衛星が通過するかは、JAMSATの通過予報のページを見ればわかります。通過予報のページを開き、一番近い町の名前をクリックし、SEEDSをクリックすると、これから10日間に衛星が通過する時刻と方位などの情報が表示されます。特に Peak Elev(最大仰角)の欄に*印のある通過は、衛星が地平線から高く上ることを意味しており受信に適しています。仰角とは、あなたを頂点として地平線と衛星が作る角度です。仰角0度は地平線、90度は天頂を意味します。 Azimuth とは方位角を意味します。あなたの北が0度、東は90度、南は180度、西は270度となります。360度で北に戻ります。 Date (JST) Time (JST) of Duration Azimuth at Peak Vis Orbit AOS MEL LOS of Pass AOS MEL LOS Elev Sat 20Jul00 10:27:59 10:38:37 10:48:33 00:20:35 169 257 346 79.1* DDD 19131まず注目するのはPeak Elev(最大仰角)です。79度ですから、ほぼ頭上を通過することがわかります。この通過(パス)は受信しやすそうです。ではこの行を左から読んでいきます。 Sat は土曜日、20Jul00は、逆に読んで2000年7月20日を意味します。 Time (JST) of の時刻欄は AOS(見え始める時刻)は10:27分です。この時間までに受信準備を済ませておきます。 MEL(最大仰角に達する時刻)は10時38分です。この時刻に衛星は最も近づきます。 LOS(見えなくなる時刻)は10時48分です。衛星は地平線に沈んでいきます。 Duration of Pass(見えている時間)は20分間です。簡単な道具でも5分間は受信できるでしょう。 Azimuth at の方角欄は AOS(見え始める方角)は169度です。ほぼ南から昇り始めます MEL(最大仰角に達した時の方角))は257度です。ほぼ西にあたります。 LOS(見えなくなる方角)は346度です。ほぼ北に沈みます。 Orbitは衛星が打ち上げられてから何回地球を回ったかを示す軌道番号です。 見え始める時刻と見えなくなる時刻は、地平線が見渡せるものとして計算していますから、周辺に建物や丘がある場合は、これよりも遅く見え始め、早く見えなくなります。 では、イメージトレーニングしてみましょう。通過予報に次のようにあったとします。 Fri 09May08 20:38:12 20:44:44 20:51:21 00:13:09 164 79 350 79.9* NVV 168
Wed 14May08 08:09:09 08:14:04 08:19:04 00:09:55 42 92 142 9.8 DDD 234
さあ聞こえましたか?それが宇宙から、たった0.5Wの電力で送られてきた信号なのです。ちょっと難しかったでしょうか?それとも簡単すぎましたか?デジトーカは、衛星通信を試みる際に必要になるいくつかの基礎技術を教えてくれます。 なんどか繰り返し試みてください。 この種の小さな小さな衛星では、誰でもいつでも安定して受信できるように衛星側がお膳立てをする余裕はなかなかありません。よってパスによっては衛星からの電波がとても弱いかもしれません。衛星はいつもあなたに向いてくれてはいません。あなたにお尻を向けていることもあるのです。だから、一度であきらめずに、条件のよさそうなパスを見つけて、何度も試してみましょう。 あるいは同じロケットで打ち上げられた東工大CUTE-1.7+APD IIからの信号を受信して比較してみるのもよいかもしれません.周波数は437.275MHzでCWを, コマンドにより437.475MHz(SEEDの10kHz 下、すぐ近くですから間違えないように)でパケットを送信することもあります。 この受信方法を会得したら、今度はもっと明瞭に、もっと長時間安定して受信するためにいくつかの工夫をしてみましょう。一つ一つ効果を楽しみながら改善していけば、きっとよい成果がえられるはずです。人工衛星や衛星の軌道への理解も深まります。 1. まずはアンテナに一工夫(でも大きすぎるアンテナは禁物) ホイップアンテナで挑戦するのなら、無線機に付属する短縮アンテナよりも、1/2波長のホイップのほうが良い成果が得られます。衛星からの信号を捕らえたら、アンテナと地面の距離を調節したり、向きを変えたりして、どうすれば強く安定して受信できるかを探ってみましょう。衛星の仰角が高い時は、アンテナを水平にして、地面に近づけたほうが受信しやすいこともあります。これは地面が反射板として働くからです。 という事は段ボール紙とアルミ箔で反射板を作って、その前にホイップを置いたらどうでしょうか。いろいろ試してみる事がありそうです。 ホイップでの受信が上手く出来るようになったら、ほどほどの利得の期待できる 3 から 6 エレメント程度の八木アンテナを用意してみましょう。折畳み式や組み立て式のアンテナが市販されていますが、波長の短い430MHz帯ですから手持ちできる軽量な八木アンテナを自作するのも容易です。 あまりエレメント数の多い、利得の大きなアンテナは避けましょう。このようなアンテナは重かったり、指向性が強すぎたりして、動き続ける衛星に正しく向けるのが難しいからです。 身近な材料で簡単に製作できる6エレメント八木アンテナなどを作ってみましょう。ホームセンターで手に入る材料を使い1時間ほどで完成し、しかも高性能です。 八木アンテナで衛星を追うと、衛星が空を駆け抜けていく様子が手にとるようにわかります。 衛星を追えるようになったら、手持ちアンテナを利用して、もう一つ面白い実験をしてみましょう。それはアンテナを衛星に向けたまま、ブームを軸にして左右に45度ずつの範囲でひねってみるというものです。ひねると信号強度は大きく変化することでしょう。 信号強度が強くなるのはSEEDS衛星のアンテナと受信アンテナの偏波面が一致したことを意味します。受信アンテナと衛星のアンテナの特性を理解すれば、受信アンテナのひねり具合から衛星の姿勢が刻々変化する様子を推察できるようになるでしょう。タワーに固定したアンテナではこんな芸当はできません。だから偏波の影響を受けないように円偏波のアンテナを使いますが、一方でせっかくの情報を聞き落とすことになります。まずは簡単な道具で得られるだけのものを体得しておきましょう。衛星からの信号の偏波には電離層と地磁気の組み合わせが影響を与えることもあります。そんな様子も聞き取れるかもしれません。 2.ドップラーシフトを追いかける(受信周波数は変化し続けます) せっかく利得のあるアンテナを使っても衛星が受信者に最も近づく数分間しかはっきり受信できないことに気づいたででしょうか。衛星から送信する周波数はいつも 437.485MHzなのですが、受信機に届く信号の周波数は、衛星が近づいてくる時は437.485MHzより10kHzほど高く、離れていく時には逆に10kHz低くなります。 これをドップラーシフトと呼びます。 救急車のサイレンが、近づいてくる時には高く、遠ざかっていく時には低く聞こえるのと同じ仕組みが、電波でも生じます。 受信者に届く周波数が変化するのですから、正しく受信するためには受信機の周波数もこれに合わせて;
ここまでやれば、べリカードの申請に必要なコードも聞き取れます。実のところ大じかけな方法で受信しても、これ以上鮮明には聞こえません。 3. 毎回見える方向が西にずれる、朝と夜とでは衛星は逆向きに飛ぶ?北に行くとよく見える? SEEDSは朝数回、夜数回上空を通過していきます。通過予報を注意深く読んだり、手持ち八木アンテナでSEEDS衛星を追いかけてみると、面白い事に気付きます。例えば、朝その日最初のSEEDS衛星の通過を観測してから1時間半ほどするとまたSEEDSがやってきますが、前と同じところではなく西にずれたところを通過していくのです。これはなぜでしょうか。また午前と午後の飛んで行く向きを比べると、それらは逆になっていることに気づきます。午前は南から北へ上っていくのに午後は北から南に下っていくのです。さてこれはなぜでしょう。次のヒントを参考に地球儀を持ち出して考えてみてください。
次にJAMSATの通過予報のページで,稚内ではどんな見え方をするのか調べてみましょう。一日に8回ほどのパスがあるはずです。東京ではどうでしょうか?パスは4〜5回しかありませ。なぜ違いがあるのか考えてみてください。 通り過ぎていったSEEDSは今どこにいるのでしょうか? Heavens Above のホームページは現在のSEEDS衛星の位置を地球儀と地図の上に示してくれます。 ここをクリックしてください。 一度ページが表示されたら、数分後にブラウザの再読み込み(更新)ボタンを押してみましょう。衛星が動いていく様子がわかります。 衛星の軌道について興味を持った人は、JAXAのこのページに簡単な説明がありますから読んでみてください。 絵も多くやさしく書かれています。 4. 衛星がどのように上空を通過していくのか知ろう JAMSATの通過予報のページを見れば衛星の通過時刻や、空のどの辺りを通過して行くのかその方位と最大仰角を知ることができます。Heavens Above のホームページでは現在の位置を知る事ができます。 しかし、コンピュータと軌道計算プログラムを使えば、いつでももっと具体的に、かつ視覚的に通過経路を知ることができるのです。AMSATのソフトウェアダウンロードのページには、いくつかの軌道計算プログラムが用意されていますから、適当なものをダウンロードして実行してみてください。軌道計算プログラムを使って衛星の位置を正しく計算するには、なるべく新しい軌道要素が必要になります。SEEDS衛星の最新軌道要素はCelesTrack や SpaceTrack から入手できます。 これで衛星が空のどこを通過していくかがわかりましたから、それに合わせて指向性アンテナを衛星に向け続けることができるはずです。 5.受信機の感度を改善しよう 最近の無線機/受信機はSEEDS衛星からの微弱な信号を受信するのに必要な受信感度を持っています。 しかし低雑音プリアンプを付加すれば、より微弱な信号も明瞭に受信できるようになります。 高性能素子のおかげもあって、高性能な低雑音プリアンプを自作することもさほど難しくなくなりました。完成品もキット売られています。ひとつ注意する事は、プリアンプを接続したまま送信してしまわないことです。広帯域受信機ならこの心配はありません。 少しずつ改善を繰り返しながらデジトーカの受信に挑戦してみるうちに、衛星が地平線に現われてから、地平線に沈んで行く時まで安定した受信状態を保てるようになるでしょう。 手持ち八木アンテナで衛星を追跡することにより、高度600Km程度の低高度円軌道を飛ぶ衛星の動きを体で感じる事ができたはずです。 受信アンテナの偏波面を衛星からの信号に合わせることで、衛星の姿勢の変化も感じられたでしょう。 地球を縦に周回する衛星を地上から観測するとどう見えるのか理解できたはずです。 軌道計算ソフトも使いなれましたね。 ここで習得した技術は、やがて衛星を経由した通信に挑戦するときに必ず役に立つものです。 楽しみながらチャレンジしていただきたいと思います。 もう一度おさらいすると;
丁寧にアンテナの角度を合わせる必要はありません。5〜6エレメントくらいの八木アンテナを衛星の方位から+/-45度ほど上下左右に振ってみると衛星が動いていく様子が“手に取るように”わかります。実はプロの衛星地上局でもこれに近いことをやっています。 この方法なら600km以上も離れた所から100mWにも満たない出力と貧弱なアンテナから送られてくるのCWによるテレメトリーも、完璧に受信できるでしょう。 JAMSAT 追記:この記事に書かれていることを習得できたなら、FMリピータ衛星を使って実際に行われている交信の様子を聞く事が出来ます。SSBを受信できる受信機があればもっと多くのアマチュア衛星による通信を聞くことができるでしょう。 アマチュア衛星の運用状態はこのページに一覧されています。JAMSATではそれらの衛星の日本上空の通過予報は提供していますし、Heavens Above のサイトにはその日に聞こえそうなアマチュア衛星を時刻順に並べた表もあります。 Heavens Above へは JAMSAT の通過予報のページからリンクもあります。 日大ではSEEDS衛星の受信報告に対して受信証べリカードを発行しています。デジトーカーの The code is XXXXXXXXX のコードを添えて受信報告を送りましょう。受信報告の送り方は、日大の “べリカード”のページに解説されています。アマチュア無線家向けなら、ただ棒読みにするだけじゃなくフォネティックで読み上げてほしかったですね。 文責 岡本健男 Original edition 05/02/2008 Copyright 2008 JAMSAT All rights reserved. |
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